東京都 江戸つまみ簪

 江戸つまみ簪の歴史

ルーツは京都の「花びら簪」。
江戸の土産として人気を博す

江戸つまみ簪簪の歴史は古く、縄文時代には魔を払うための呪具として髪に細い棒を挿していたといわれます。
ちなみに「簪」は奈良時代に中国から伝わった髪飾りを指す漢語で、これに大和言葉の「かんざし」を当てたそうです。
つまみ簪が誕生したのは江戸時代。「つまみ」とは薄い絹布を小さく切り、つまんで折り畳んだ小片を組み合わせて花や鳥などの形を作る細工のこと。江戸初期に、京都で作られていた花びらをかたどった「花びら簪」の技法が江戸に伝わり、発展したと考えられています。
色彩豊かで値段も手頃だったつまみ簪は、江戸中期頃には参勤交代などで江戸へやってきた人々の江戸土産としても重宝されたそうです。江戸後期の庶民の風俗や暮らしを記録した「守貞漫稿」には、縮緬の小片で作られた菊や鶴の形の簪を島田髷に挿したという記述があり、豊国や清峯の浮世絵にもつまみ簪と思われるものが描かれています。

 江戸つまみ簪の魅力

日本人ならではの繊細さで
季節の自然の美を表現

江戸つまみ簪小さな布をピンセットでつまんで折り畳むことで立体的なパーツとし、その組み合わせで花や鳥などの形を生み出すつまみ細工。
つややかな絹布の鮮やかな色彩、指先の繊細な作業で作られるひとつ一つのパーツの造形、それらが集まることで形作られる四季折々の花や豊かな自然の表情が魅力です。
人の手で作られた鮮やかな季節の花々が、結い上げた黒髪を華やかに飾る様には、日本人ならではの繊細さと自然観、江戸文化に育まれた粋な美意識が現れています。

 江戸つまみ簪ができるまで

下絵描きから打ち込みまで
たった一人で多工程をこなす

江戸つまみ簪ができるまで作業に入る前に、図案・配色・材料などを決めておきます。薄手の羽二重を「裁ち板」の上で「裁ち包丁」と定規等を用いて8mくらいに裁断し、染色。染め上がった布地を「伸子張」りにして、刷毛で糊を薄く引いていきます。乾燥したら「裁ち包丁」で2〜10センチ角の正方形になるよう裁断。ピンセットを使い1枚ずつつまんで折り畳み、「のり板」に並べます。畳む時に使うのは、柔らかな表現には「丸つまみ」、力強い表現には「角つまみ」という手法。つまんだ布を最初に決めた形になるようにピンセットで台紙の上に並べていく「ふき」という作業の後、天極糸(絹糸)でパーツをまとめ、簪の形に組み上げていきます。天極糸でビラや足を取り付け、完成です。

主な産地・拠点 東京都
このワザの職業 つまみ簪職人
ここでワザを発揮 つまみ簪
もっと知りたい つまみ簪博物館