宮城県 宮城伝統こけし

 宮城伝統こけしの歴史

200年前、子供の玩具として発祥。
温泉客の土産から工芸品に発展

宮城伝統こけし地域の人々の気風が形状や表情にあらわされた「宮城伝統こけし」。宮城県内には「鳴子(なるこ)」・「作並(さくなみ)」・「遠刈田(とおがつた)」・「弥治郎(やじろう)」・「肘折(ひじおり)」の5系統が受け継がれています。その始まりは約200年前、椀や盆を挽く木地師の人々が、我が子の遊び道具としてつくったことにあるそう。当時、全国的に近くの温泉地へ湯治(とうじ/温泉地に長期滞留して行う温泉療養)に行くという習慣があり、木地師たちが湯治客相手の土産物として、こけしなどの木地玩具を作り、売りました。そのため、5系統すべての発祥・発展には温泉地が深く関係しています。明治中期には、湯治場が盛んになり、こけしの需要も増加。それと共に、木地や描彩も精巧になり、こけしは子供向けの玩具から大人の趣味・鑑賞用としての工芸品へと発展し、今に至ります。ちなみに、遠刈田系こけしは、現在確認されている史実の中で最も発生年代が古いため、こけしのルーツが遠刈田にあると考えられているそうです。

 宮城伝統こけしの魅力

大人びた京美人を模した品から
力強い目鼻立ちが印象的な品まで

宮城伝統こけし京美人がモデルといわれる、切れ長の目に鼻筋のとおった大人びた女性の表情が印象的な「遠刈田系こけし」、頭を回すとキュッキュッと音が鳴ることでも知られる「鳴子こけし」。それらに加えて、鳴子系に遠刈田系が合わさった、大胆で力強さが感じられる目鼻立ちが目を引く「肘折系こけし」など、バリエーション豊かな5系統があり、そのどれもが素朴な美しさと清楚さを併せ持っています。また、全工程を一人の職人が担当するため、一つとして同じ表情はなく、それぞれに個性的な味わいや温かみを感じられることも特徴です。一方で、胴に繊細に描かれた、菊や楓のほか、撫子(なでしこ)、牡丹などをモチーフにした着物柄も見どころです。

 宮城伝統こけしができるまで

全体の印象を左右する「描彩」の
工程は、繊細な筆さばきが不可欠

宮城伝統こけしができるまで一例として「鳴子こけし」が出来上がる工程を紹介します。まずは、樹皮を剥(む)き半年から1年自然乾燥させた水木(みずき)を、ろくろを使い大体のボディラインを作っていきます。つぎに、鑿(のみ)で直接削り頭、胴と別々に仕上げ、胴の上部と下部のろくろ模様をつけます。そして、ろくろでまわしながら頭と胴をはめ込み、「描彩(びょうさい)」の工程に移ります。描彩では、顔と髪に黒色、ろくろ模様と着物柄には赤と青(緑)を使用し、描いていきます。全体の印象を決定づける大事な工程でもあるので、繊細な筆づかいが求められます、最後に、木目を一層美しく艶やかにするため、蝋(ろう)を塗れば完成です。

主な産地・拠点 宮城県
このワザの職業 こけし工人
ここでワザを発揮 こけし
もっと知りたい みやぎ蔵王こけし館
日本こけし館